先日発売になった「マスク社会が危ない 子どもの発達に『毎日マスク』はどう影響するか?」を読んでみました。
子どものマスク着用は、どんな影響を与えたのか、そして与えるのか。
ポストコロナ時代を見据えて、いま子どものために考えなければならないことは何か。
本書は、子どもを持つ親はもちろん、ぜひ教育機関の方に読んでもらいたい内容だと思います。
本書の本当に簡単な紹介
2020年5月、新型コロナウイルスの感染症対策として提示された「新しい生活様式」。
①身体的距離の確保 ②マスクの着用 ③手洗いなどが強調されました。
そこから2年以上たっていますが、これらの3つは、いまだに遵守されています。
本書は、子どもにこれらを強いることは、本当に正しいことなのかどうか、海外の事例や実際の検証、脳科学からの視点をもとに、必要性、ポストコロナ時代にどうあるかが示されています。
マスク着用の結論
マスクをつけることは、子どもの発達上において、デメリットが多い。
そのため、外すべきである。
しかしながら、中高生においては、マスクを外したがらない子どもも増えてきている。
必要なのは、小学生のような低学年においては、マスクを積極的に外させる支援。
そして、思春期を迎えている子どもには、マスクを外してもよいことを伝えるとともに、マスク着用の自由選択を与えてあげること。
ざっくり書くとこんな感じです。
マスク着用のデメリット
ここからは、どのようなデメリットがあるかについて、少し触れていきます。
あくまでさわりなので、内容はぜひ読んでじっくり理解してください。
乳幼児期の成長を阻害する恐れ
乳幼児期は、「見ること」「聞くこと」において、周りの環境から大きな影響を受けています。目だけでなく、口も含めた顔全体の表情から情報を読み取ってコミュニケーションを行う機会が、マスク着用によって激減。
特に、乳幼児は、目だけでなく口元を見て、動きや音をまねしようとすることが大切なのですが、マスクはそれを阻害してしまいます。
ヒトは、他者の表情や行為を積極的に真似し、そして区別し、理解していくものですが、その過程が破壊されてしまっているそうです。
表情を読めない子どもたち
もちろん、家庭では、マスクを外しているのでしょうが、子どもは多くの周囲の大人の表情を見るものなのです。
保育園や幼稚園で先生の顔が見れない子どもは、表情と感情を区別して、理解することが難しくなっているということです。
事実、マスクをつけている小学生の子どもが、担任の先生が怒っているのか、怒っていないのかがよく分からないと答える事例も。
事実、英国の研究機関は、コロナ禍の2年で、相当数の子どもから、「言語の獲得の遅れや表情の乏しさ、不安傾向がある」といった負の影響が出ていると、報告しました。
社会性が育まれない
また、ITによるオンライン上での接触が増えたことにより、リアルな身体接触の機会が減り、「身体感覚」の乏しい子どもも増えているそうです。
親戚の人や、おじいちゃん、おばあちゃんに抱きしめてもらった、手をつないでもらったという経験をしないまま成長していく子どもたちが増えているのです。このような人と人との関わりが乏しい子どもは、社会性を育む機会がないだけでなく、脳の成長にも遅れが生じてしまうこともあるそうです。
マスクを外せない中高生の増加
マスク着用が当たり前になった現代、中高生に特に多く見られるのは、マスクを外したくないというストレスだそうです。ある中学では、アルバム撮影のためにマスクを外したのですが、多くの生徒から、外したくないという声が。
また、その時、初めて同級生の顔を見たという生徒もいるぐらいです。思春期というのは、多感な時期で、風貌も気にする年ごろ。人前で素顔を見せるといったこと自体を拒否する子どもが増加しているようです。
外交的な人は、自信を持つ機会がない
人によって交流を得意とする子どもがいます。そのような外交的な子どもは、先生や友人からの交流や反応を通して、自分の価値や自信をつけていく子どもであることが多いのですが、コロナによりその機会を失い続けてきました。彼らの自己肯定感は、学校で高める機会を逃しているのです。そのような子たちが抱える内在的なストレスにも目を向ける必要があると言っています。
外国との比較
子どもは、他者との関係によって自分の価値や自信を見出していくのですが、「自分の顔を隠す」ことが日常となった子どもはありのままの姿をさらけ出すことがないまま大人になっていく、このことがどんな影響を与えるのか。
なお、米国の調査によると、マスクを義務化した州とそうでない州と比べて、陽性者の増減にほとんど違いが見られなかったそうです。
また、フロリダ州では、子どもへのマスク着用義務付けを禁止する命令が出ました。
ヨーロッパも、いま、次々と緩和が始まっています。
私の感想 オーストラリアの現地と比べてみて
先日、オーストラリアの先生とオンラインで話す機会があったのですが、現地では、コロナは風邪と同じ扱いでした。マスク着用に関しても、基本的には自由だそうです。
着けたい人はつけるのが基本ですが、ほとんどが着けていないとのこと。
欧米諸国は、いち早く、制限が子どもに与える影響について気がつき、対策を打っています。
もちろん、感染症により、重症となる方がいるのも事実です。
ですが、現在の様式は、大人目線で作られているものなのは間違いありません。教育現場は、主体が子どもです。だからこそ、教育現場においては、子ども目線で考えていく必要があるのではないでしょうか。
最後に
今回はマスク着用に焦点を当てた記事ですが、本書は、マスク着用だけでなく、過度の消毒対策、そして人と触れ合う機会の消失による影響、そして後半には、諸外国との違いについてなど、コロナ禍において日本が持つ現状と問題が浮彫にされています。
気になった方はぜひ購入して読んでみてください。